図書館より 下流志向

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

学校や教師、家庭や両親を売り手、子供たちを買い手に例えて、市場でどういう動きが生じているのか、という視点で現代の子供たちの行動をとらえています。
『利益がないのなら、買わない。』 消費社会の中で育ち、等価交換が適正に行われることを望んで、今の子供たちは言動・行動に出ます。
社会は人との交わりです。それをモノでとらえてしまう、現代の子供はちょっと考え方が貧相な気もします。でもこれは子供が悪いのではなく、そういう社会を作った、大人に責任があるのです。
これからはジェネレーションギャップを埋めて会話していける能力が私たちには必要なのかもしれませんね。
第4章 著者との質疑応答の項目が一番読んでて共感できました。あまりにも周りに起こっていることがそのまま本に書かれているので。実体験が本文に含まれると身の回りでこんなことが起こっているのだ、と妙につくづく感じます。

  • 『わからないこと』よりも『わからないことがあっても気にならない』ことに危機を感じる-彼らは『自分の知らないこと』は『存在しないこと』にしている
  • 答えることのできない問いには答えなくて良い
  • 「私は自分がその価値を知っている商品だけを適正な対価を支払って買い入れる」消費主体としての子供たちはそう高らかに宣言しつつ学校に入ってくるわけで、そんな子供たちが静かに授業を聴くはずがない
  • 学びは市場原理によって基礎付けることができない。時間的な現象である
  • 自分が何を学んでいるのか知らず、その価値や有用性を言えない、という事実こそが学びを動機付けている
  • リスク社会においては努力におけるごくわずかな入力差が成果において、巨大な出力差として結果することがある(二極化の進行)
  • 個人がリスクをヘッジすることは原則不可能。リスクヘッジには最低2人が必要だから。
  • リスク社会を生きるには「自己決定しその結果については一人で責任をとる」ということはありえず、むしろリスク社会が弱者に強要する生き方(というよりも死に方)である
  • 学ぶことの意味を知らない人間は、労働することの意味も分からない。
  • 学ぶことは生きていくために必要なこと
  • 子供には就学前に消費主体ではなく、労働主体として人生をスタートさせるようにする
  • ニートのいる家庭は平均よりも年収が少ない
  • 親が懸命に働いているのに収入が少ないと事態はニートにとって『労働することの無意味さ』をいっそう深く確信させることになる
  • 子供に課せられている規格化、標準化の圧力は想像を絶するほど巨大になっている
  • 自分かこの広大な宇宙の、他ならぬこの場所に、この瞬間に、この人といっしょにいるという事実に、人知を超えた『何か大いなるもの*1』の意思を感知できると、人間はとても豊かな気持ちになれる。
  • 自分以外の誰も自分が今占めているこの場所この機能を代わって演じることができないという感覚、つまり自分の唯一無二性の確信が芽生えていく

*1:よく"Something Great"と英語では言います